せっかくの完全オフの木曜日の午後になって
目覚めてしまうやるせない気持ちのせいで、
すべてがどうでもよくなってしまいそうだった。
でももう先延ばしにはしたくなかったからバスに乗った。


あまりの寒さに指の感覚がおかしくなっていたので、
予備校に直行するつもりだった予定を変えてカフェに行った。
キャラメルラッテとヘーゼルナッツラッテのどっちが甘いかと店員に訊いた。
(昨日もスタバで同じことをした)
「キャラメルラッテのほうが甘いですね」
「じゃあ、それを」
「甘いの好きですか?」
「?
 はい」
「じゃあシロップ多めにしておきます」
そしてあたしはシロップ多めのキャラメルラッテに口をつけた。
苦くはないけどほんのり甘いくらいだ。
あたしの甘さの基準は少しおかしいのかもしれない。


勉強をしなければならないけど現代文現代文と言い訳しながら
姫野カオルコの「ツ、イ、ラ、ク」を移動中やお風呂の中で読み進めた。
姫野カオルコの名前はティーン小説みたいで少し恥ずかしい。
でも切なかった。
特に394ページから373ページのくだりが。
でもラストは半分くらいしか理解できない。
それはあたしが若い証拠なのだ。多分。
あたしがこれから16年生きて準子と同じ年になったらわかるだろうか。
今より理解が増すだろうか。


昨日遊んだ彼の友達からメールがきていた。
「まだ**(彼)にはきいてないけどあしたバイト入ってる?」
「はいってるよー、18時からラストまで」
「じゃあ**(彼)にきいてみる」
「わかったー」
返事がこない。
それは彼が返事をしてないということだ。
彼は友人と遊ぶことを選ぶだろうか。
それとも友人と遊ぶことを取りやめにしてでも
元カノのバイト先に行くことを拒むだろうか。
状況を理解してもらうために彼はあたしを元彼女だと教えるのだろうか。
あたしは彼の友達に言わない。
彼が友達に教えて確認をされたらそうだと認める。
でも自分からは言わない。
あたしは彼の友達にすこぶる受けがいい。
彼の友達は深夜のメールで前からあたしに話しかけたかったと言った。
あたしはこの顔とこの性格でよかったと思う。
彼の友達の中で彼と遊ぶということとあたしのバイト先に食事にくる
というのは多分きっと同等の重みを持っているのである。
そんなことを考えているとメールがきた。
「あしたは無理やって
 23日はバイト入ってる?」
彼はあたしを元彼女だと教えなかった。
彼はあたしを表面上は純粋な女友達と扱うことを選択した。
たかがバイト先に行くくらい、と自分自身を説得した。
でもそれでいい。
それがいい。
最後まで偽り続けたらそれは真実。
16歳の時も同じことを思っていた。
23日は21時までにしてそのあと遊べるかなぁ。
期待しちゃいけない。
期待しちゃいけない。
期待したら2倍の落胆が待っている。