自分が受ける立場の趣味においてその分野の好きな人はたくさんいるけど
自分がする立場の趣味においては特別好きな人はいない
感化されてしまうからだろうか

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彼とのデート当日。
葬儀のために部屋も片付けられず洋服も決めてなくて
思い切って自主休講した。
冬に祖父に会ったのが最後になってしまったように、
彼に会うのも最後になってしまう可能性だってあるのだから
単位より自主休講してデートをすることのほうが
あたしには何より大切だった。


前日に連絡とろうと思いながら結局できないまま
当日になってお昼休みと思われる時間帯にメールを送信。
しかし返事がこない。
メールの返信の感覚で15時ごろにも休憩があるみたいだけど
そこでも返事がこない。
自主休講もBEAMSで買ったワンピースも時間も
彼とデートができないんじゃすべてが無駄になってしまう。
でもそこで諦めたらデート終了だよ、とあたしの
心の安西先生がつぶやいたので帰って部屋を片付けたりした。
すると夕方に彼から連絡があった。
青い着信ランプ。


それから1時間後くらいにコンビニにいる彼から電話があった。
「何かいる?お茶とか」
「いるー」
「何がいい?」
「何でもいい」
「それがいちばん困る」
「ですよねー」
程なくして彼はあたしの部屋にやってきた。
変化を見せるために彼からもらったブレスレットではなくて
華奢でキラキラしたブレスレットを身につけたあたしと、
あたしのあげたネクタイはしてないどころか
クールビズであらわれた彼に同じ波長を感じる。


彼は車を買ったらしい。
さすがにそこは中古車らしいけどそれでも結構な値段で
銀行か何かのローンを組むことになったらしい。
どうも20歳そこらで就職したてでは組めないらしいが、
勤めている会社のネームバリューでどうにかなったみたいだった。
大学の先生は大手ばかり受けるなと言うし、
あたしもある程度自分に合った仕事をしたいと思うけど、
大手は大きいだけあってメリットも十分にある。
そんなことはさておき、
あたしのマンションと正反対の方向に配属になった彼も
これで土日は電車やらバスで交通費をかけることなく
ドライブしながらこっちにこれるよね・・・!
あたし・・・待ってるから・・・!
それにしてもベッドの上でじゃれながら足だって
絡まってるくせに変な気にならない彼の
性的な健康が心配です。


そして当然のようにベッドで眠りに落ちる彼。
壁と彼の間に隙間があったので活用しない手はないと思い、
意を決してその間にもぐりこんで隣で眠ったふりをした。
少しして目が覚めた彼は一瞬びくっとして
「びっくりした」
と笑った。
そして彼は目が覚めきってない声でだらだらと喋った。
寝起きの男の人って可愛くて好き。
電話かけて起こしたときのだるそうな声も好き。
彼はあたしの頭をなでたり体をくすぐったり(痩せます、神様)
あたしは彼の手やらべたべたと触っているのに
なぜだ・・・なぜ何も起こらない・・・!
ちゅーのひとつやふたつ・・・!!
この行動の甘さに反比例するように
雰囲気が全くエロくならないのはなぜでしょうか。


でもここ最近じゃいちばん触れ合ったので合格にしておこう。
あたしはきっといちばん仲のいい女友達とでさえ
同じベッドの上でこんなにじゃれたりできないだろう。
空気が優しくあたしの世界を包むようなあの感覚は、
彼と一緒にいるときでしか感じることができない。