ヤツとすれ違った。


4冊の本を手に持って図書館まで歩いてる途中だった。
赤い車を見ると運転席の人を確認する癖がついてしまったあたしは、
いつものように隣を通り過ぎていく車を見た。
若い男の人で、白のポロシャツを着ていた。
メガネかけてなかったから曖昧だけど。
でもヤツだった。
こっちを見ないようにしてたからわかった。
少し下を向いていて、その顔がずっと前に見たヤツの顔と一致した。
昨日の夜にもう鮮明に顔も思い出せないなって思ってた。
そういえばあたしは去年の11月のことを考えなくなっていた。
忘れるのがこわくて、できれば温度も感触も鮮明に覚えていたかった。
「今を手放さなきゃ次はやってこない」
みたいなことが昨日読み終わった本に書いてあった。
風街っていうタイトルの本。
(著者は福岡県出身で知ってる地名がたくさん
 とくに箱崎あたりから博多までの人は地元すぎる!って思うはず)
でもやってくるかわかんない次はいらないよーとあたしは思う。
なんか見るたびにヤツがいい男になっていくようで、複雑だ。
手にはいらないからこそかもしれないな。


あとでドラッグストアにワックス買いに行こう。