今日のバイトはもううんざりだった。
お客様に伝わらないかと心配になったぐらいにいらいらしていた。
なんであたしはここにいるんだろうとばかり考えていた。
「子どもがね、
 『あのお姉さんみたいにニコニコできる人になりたい』
 って言ってました」
家族連れのテーブルのお母さんがレジのときにそう言ってくれた。
あたしは本当にうれしくて挙動不審になりながらお礼を言った。
そのあと耐え切れなくなってチャンバーの中で泣いた。
あたしの笑顔にそんなに価値があるのだとしたら、
あたしは意地でも人の前では笑顔でいたい。

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あたしはいろんな人のいちばんになりたいと思ってるから
毎日こんなにつらいんだと思う。
誰のいちばんにもなれてないからいろんな人のいちばんになりたい。
好きな人のいちばんになることの重みは、
世界中の人のいちばんになることに等しい。
でも等しいけどやっぱり好きな人のいちばんのほうが価値がある。


「お姉さんは彼氏とかいますか?」
普段バイトしてるときにこの質問をするのは
大抵若くてノリのよさそうな男の人なのに、
昨日のバイトでこの質問をしたのは家族連れのお父さん!
奥さんもつっこむかと思いきやにっこり笑顔。
まさか家族全体であたしを心配…と思うと胸がいっぱいです。